
の音を出す、チェロは低い音を出すとか、そういった程度の仕分けしかなくて伴奏に使われていたんですが、その楽器が、バイオリンはバイオリンらしいキャラクターというのを持つようになってくる。フルートはフルートらしいキャラクターというのを持つようになってくる。バイオリンはバイオリンとしての独自のテクニックが開拓をされて、フルートはフルートらしいテクニックというのが開拓をされて、これらの貴族のサロンでは器楽音楽というのが非常に盛んに行われるようになってきます。 特に室内楽なんていう言葉が今ありますが、室内楽というのは読んで字のごとく室内の音楽、カンマー・ミュージックとかミュージック・ダ・カメラとかいう言い方をしますけれども、これは今言った宮廷のような劇場を持っていない貴族がサロンで行った音楽という意味で、室内楽というのが盛んに起きてくるようになるわけです。 しかし、この場合も聞く人というのは、その貴族の友達がたくさん集まってきて聴く、つまり特定の限られた範囲のお客さまだけが聞くわけで、音楽家は今度は貴族に雇われるようになるわけですね。貴族のお抱え演奏家というのができてくる。さっきも言いましたように、楽器の音楽というのが非常に発達をしてきましたので、バイオリンを弾くことが物すごくうまい人、あるいはチェンバロを弾くことが物すごくうまい人、そういう人がだんだんとできてきて、それが貴族に抱えられる。モーツァルトだとかハイドンなんかは、後半生はそういったことで生活をしてきたんです。 要するに、昔の日本の大名が剣の名人を抱えていて大勢人を招いて、大名同士で自分の抱えている剣豪に試合をさせて、勝った方の大名が自慢するというような話がよくありますけれども、それと同じようなことがこのころは起きていました。貴族同士がお抱えの音楽家に、パーティーで試合をさせるわけですね。試合というのは弾き比べというのをやるので、これは話をしていると長くなっちゃうんですが、いろいろ即興演奏をしたり、同じ曲を2人で弾いたり、自分でつくった曲を必ず弾くとかなんとかいって、結局どっちかが勝つ。勝った方の貴族が自慢するというようなことがありました。モーツァルトやべートーヴェンもこういった弾き比べに出さされています。 これは大事なことなんですが、時代がある程度前後いたしますけれども、今の貴族が盛んに音楽家を抱えたり、それから器楽音楽が出てきたというのは大体17世紀から18世紀の半ばぐらいまでの間ですね。その間が貴族の音楽の全盛の時代であります。その頃までは音楽家というのは自分で楽器の演奏もし、それから作曲もする。つまり、自分が演奏するということは、自分で曲をつくって、その曲を弾くということでありまして、同じ曲を弾
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